
皆様にお詫びとご報告です。
1月4日午後2時にNC赤英が永眠いたしました。
いままで応援して下さった皆様どうもありがとうございました。
そして「命に別状のない病気」とウソをついていて申し訳ありませんでした。
去年の8月ホラリオンの稽古中に黄疸が出まして、何気なく病院に行かせましたところ、末期のすい臓ガンであると。「橋沢さん、おれはもう駄目だ」と取り乱す彼の電話に、すい臓ガンの何たるかを知らず「大丈夫だ、お前なら治る。早く治して、またお客様の前でバカやろうぜ!」と言ったことを思い出します。
その後、信じるものを得て、彼は所謂抗ガン治療をしませんでした。
「このままだと余命3ヶ月だ」と医者に宣告されても、彼は「必ず劇団に復帰するから。俺は生きるぜ。劇団の『NC赤英』は永久欠番にしといてくれ!」
永久欠番じゃ、死んじゃうじゃねぇか、バカ。
「お客様に言ったらドン引きするから、言わないで」
この言葉で、私は公表することを止めました。もちろん復活を信じて。
ヤツとの出会いは20年も前に遡ります。大学演劇フェスティバルでヤツが早稲田の学生、私が明治の学生として面識を持ちました。本当に頭抜けて面白い男でした。
結果、最優秀男優賞を貰っていました。
その後、なんやかやで客演から始まり、いつの間にか劇団員になっており、ここ数年は佐々木が左腕なら、彼は右腕としてよくやってくれていました。演技は実は上手く、芝居のことしか考えていない男でした。後進に厳しく、自分に甘い!…あれ?ダメじゃん。
だが、私が役者を叱り飛ばすときは逆にコッソリ慰める、そんなヤツでした。
さて、ギャグはというと、つまらない。永遠に繰り返しても面白くない。ダメを出しても、必ず本番でやっちまう。勘弁してくれ、演出の俺がスベッたと思われるだろ!
「ま、時計してないけどね」「おっとっと」「わっとっと」「あららー」「イエス、高須クリニック」字で書いても意味が分からねえ。
「ウケないと口惜しくてさあ、ついやっちゃうんですよね」と確信犯の笑みを浮かべて、悪びれもせず言ったものです。
カウンタックーズは全力でやっていました。もちろん近年の劇団に対する姿勢も全力でしたが、カウンでボケているときは心底楽しそうでした。
気難しさから、彼を嫌いな人間も少なくありません。でも、芸人なんて、役者なんてそんなものです。ただ私がひとつだけ残念なのは、彼を世に出させてあげられなかった事。売れさせてやることが出来なかったこと。ま、私も小粒だから仕方ないけどね。
ハタと思う。ヤツはもしかしたら、そんなことは望んでなかったのかもしれないと。「舞台にいるときだけが現実。あとは夢ですよ」ヤツの言葉が蘇る。
お疲れ赤堀。まだまだお前のとこには俺は行きません。予定では200才まで生きるので。だから、行く頃には忘れてるかもな。もし忘れてたら、必ず声かけてくれよ。そん時は、しかたねぇ、また一緒に芝居やるか。それまであの世の巨匠たちに笑いでも習っててくれ。そして今度は俺にその笑いを教えてくれ。
それまで一旦サヨナラだ。ゆっくり休めよ!